現金というのはバーチャルな存在です。
バーチャルとは、実体を伴わず仮想的な、という意味です。
「1万円札」と「1万円の時価がついた株式」だったら、どちらがリアル(実体がある)で、どちらがバーチャルだと思いますか?
恐らく、1万円札がリアルで、株式のほうがバーチャルだと思うのではないでしょうか。
しかし、1万円札の原価はたったの20円です。
それを私たちは、「1万円の価値がある」と思い込んでいます。
一方で、株式は、株式会社と紐づいています。
会社が持つ有形・無形の資産の権利が乗っかっています。
もちろん、株価は変動しますが、少なくとも会社という「実態のあるもの」と紐づいているわけです。
つまり、現金よりもはるかにリアルな存在なのです。
しかし、どんどん株式投資をしろというのも暴論ですが、一方で必要以上にお金を貯め込むのも問題です。
そういうお金が消費にも投資にも回らなければ、経済は停滞してしまいます。
貯金そのものが目的になると、今度はお金を失う時の痛みが大きくなりすぎます。
また、「投資は悪」という思い込みは、「投資」と「投機」が区別されていないことに問題があります。
「投機」とは、利益のみを目的にしたギャンブルのような行為です。
パチンコやカジノと同じように、得する人がいる一方で、損をする人もいるというゲームです。
1つのパイを奪い合うゲームを「ゼロサムゲーム」と呼ぶのですが、投資をギャンブルだという人は、それをイメージしているのではないでしょうか。
一方で、「投資」は全く性質の異なる概念です。
新しい商品や市場をゼロから生み出し、全員が得することこそが投資の本質です。
1つのパイを奪い合うのではなく、パイを大きくすることで全員の取り分が増えることを目指すのです。
この本質を理解しておいて下さい。
金融庁は、少額投資非課税制度(NISA)の積み立て版「つみたてNISA」という制度を創設しました。
これは、毎年40万円まで20年間、投資で得た利益に対して課税されない制度です。
もちろんこの制度は、きちんと利用されないと意味がありません。
この制度は20年間という長期間にわたり投資を促進するという所と、積み立ての商品に適用されるものであるという所に意味があります。
まだ金融資産を十分に保有していない若い世代にはうってつけの制度です。
若い世代だけでなく、50%の人が金融に対して「積極的に無知であろう」としている日本の社会において、短期的に投資教育を成功させることは難しいと思います。
しかし、幸いにも個人型の確定拠出年金(iDeCo)制度に加えて、つみたてNISAという新しい制度が加わったことで、長期投資を促進する非常に優れた制度が整ってきました。
これをチャンスに、粘り強く官民一体で投資教育を進めていくことが、「貯金は善、投資は悪」という思い込みを変える一歩に繋がります。
思い込みを阻止するために、常に動き続けて、学び続けることを大切にして下さい。