ストレスの脅威
意志力について考える時、私たちの多くはまず「意志力とは何か」という所から入ると思います。
意志力というのは、性格の特徴あるいは長所なのだろうか、人によって持っていたりいなかったりするのだろうか、困難な状況で奮い起こす火事場の馬鹿力の様なものだろうか、などと頭をひねります。
意志力とは、進化によって得た能力であり、誰もが持っている本能であり、脳と体で起きている現象を対応させる能力です。
しかし、私たちはストレスを抱えていたり、憂鬱だったりすると脳と体がうまく連携しない事を学びました。
また、睡眠不足や極端なダイエット、座りっぱなしのライフスタイル、その他あなたのエネルギーを奪う要因や、脳と体を慢性的にストレス反応の状態に陥らせる要因などによって、意志力は損なわれる事があります。
意志力なんて、要は本人の心構え次第と決めつける様な人や、ダイエットの権威や口うるさい配偶者などは斬新だと思うでしょう。
確かに心は重要ですが、体も一緒に取り組む必要があります。
ストレスは意志力の敵です。
しかし、私たちは何かをやり遂げるには、多少のストレスがあっても仕方が無いと思いがちで、ストレスをさらに増やすようなマネをします。
やるべき事にギリギリまで着手しなかったり、自分の怠け癖や自制心の弱さを責める事で自分を奮い立たせようとしたり。
あるいは、自分ではなく他人のやる気を引き出す為にストレスを利用する事もあります。
職場で猛烈な仕事ぶりを見せつけたり、家でカミナリを落としたり。
そういう事は短期的には効果があるように思えるかもしれませんが、長い目で見た場合には、ストレス程あっという間に意志力を弱らせるものはありません。
ストレスに対する生理機能と自己コントロールの生理機能は、一緒には成立しません。
闘争・逃走反応も休止・計画反応も、共にエネルギー管理の1つの方法には違いありませんが、エネルギーと注意力の向け方がまるっきり逆です。
闘争・逃走反応では、本能的に行動できるように、エネルギーは全て体に向けられ、慎重な意思決定をする為の脳の領域からエネルギーを奪い取ります。
一方、休止・計画反応では、逆にエネルギーを脳に送ります。
それも、脳ならどこでも良い訳では無く、まさに自制心の中枢である前頭前皮質へ送るのです。
ストレス状態になると、人は目先の短期的な目標と結果しか目に入らなくなってしまいますが、自制心が発揮されれば、大局的に物事を考える事ができます。
ですから、ストレスとうまく付き合う方法を学ぶ事は、意志力を向上させる為に最も重要な事の1つなのです。